2025年6月10日〜11日の2日間にわたり、年次フラッグシップイベント「BoxWorks Tokyo 2025」をリアルとオンラインのハイブリッドで開催いたしました。今年のテーマは「Content + AI コンテンツの力で、ビジネスに革新を」。そのコンセプトを体現するさまざまなセッションが行われました。
Day1の会場には1,700人を超える方にご来場いただき、オンラインで行われたDay 2と合わせると4,200人以上の方にご登録いただきました。ここでは、1日目に行われたオープニングキーノートのハイライトをお届けします。
「Content + AI」で迎える新時代。コンテンツプラットフォームもAIファーストに
あいにくの雨模様となった東京の朝、それでも会場には多くのビジネスパーソンたちが足を運びました。BoxWorks Tokyo 2025の開幕です!オープニングキーノートは、Box Japan 社長執行役員 佐藤 範之の講演からスタートしました。
Box Japan 社長執行役員 佐藤 範之
「今年のキーメッセージは『Content + AI』です」—— その言葉と共に、2日間にわたるイベントの幕が切って落とされました。ここでいう「コンテンツ」とは、文書、設計図面、画像、音声、動画などの「非構造化データ」を指します。佐藤は「非構造化データがAIによって構造化される時代が到来し、コンテンツが本来持つポテンシャルを最大限に引き出して、業務やビジネスに大きな変革をもたらす」と説明しました。
AIは2.5兆円市場へ。87%の企業がすでに動き出している現実
調査会社IDCによると、日本のAIシステム市場規模は2028年に2.5兆円にまで拡大する見込みです。これは現在のクラウドインフラやサイバーセキュリティへの投資額とほぼ同等になります。「AIはもはや単なる技術トレンドではありません」と佐藤が強調する通り、AIは企業のITポートフォリオにおいて中核を占める存在になりつつあります。この数字が物語るのは、AIへの投資がもはや「やってみよう」という実験的な段階を超えて、「やらなければ生き残れない」必須の戦略となったということです。
Box本社が実施したグローバル調査(日米欧のITリーダー1,300人対象)では、87%の企業がすでにAIエージェントを使用していることが判明しました。この普及率の高さは、佐藤自身も「想像以上」と認めるほど。ただし、実際に生産性向上を実感している企業は37%にとどまっており、ここに大きなギャップが存在します。興味深いのは、特に高いリターンを得ている企業の特徴です。彼らは3つ以上のAIモデルやエージェントを組み合わせて活用しています。AIの真価は単体での使用ではなく、複数の技術を戦略的に組み合わせることで発揮されるということです。
佐藤は、ITシステムの進化を1980年代からの20年は「記録のシステム」、2000年代からの20年は「エンゲージメントのシステム」、2020年代以降は「インテリジェンスのシステム」と分類。現在は経営・業務の意思決定に重要なインサイトをシステムから得る時代だと位置づけました。この時代にAIが加わることで、変革のスピードはさらに加速することが予想されます。
AIファーストへの大胆な舵切り
Boxのプラットフォーム戦略も、この時代の要請に応えて大胆な進化を遂げています。グローバルインフラストラクチャをGoogle Cloud、AWS、Microsoft AzureのIaaS基盤に完全移行し、グローバル12万社から預かるエクサバイト超のデータを基盤として、容量無制限で提供するビジネスモデルを確立しました。特に注目すべきは、新たに実装された「AIプラットフォームレイヤー」です。ここでのポイントは、AI機能が単独で動作するのではなく、既存のセキュリティやコラボレーション機能と有機的に連携することで価値を増大させている点です。これは、AIを「追加機能」として扱うのではなく、プラットフォーム全体の「基盤技術」として統合した結果といえるでしょう。
技術革新と並んで注目されるのが、プライシングモデルでの大胆な取り組みです。「AIの民主化」という旗印の下、2025年2月にBox AIの基本機能を法人向けのすべての有償プランで無制限開放しました。この決断の背景には、「企業がAIファーストカンパニーになるためには、日々の業務で誰もがAIを使える環境を提供することが必要」という考えがあります。ドキュメントの内容をAIで瞬時に把握したり、Box Notes上で文章作成や既存文章のチェックを行ったりといった機能が、追加コストなし、利用回数無制限で利用できるようになったのです。
2万社が共感したBoxのビジョン
「こうしたBoxの取り組みに共感するお客様は着実に増加しており、現在では2万社を超える日本企業が私たちのプラットフォームを利用しています。特に注目すべきは、日経225企業の77%がBoxを採用している点です。これは単なる市場シェアの数字を超えて、日本の主要企業がコンテンツ管理の未来をBoxのビジョンに託していることを示しています」と佐藤は講演を締めくくりました。
コンテンツとAIの融合による変革の波は、もはや避けることのできない現実となりました。BoxWorks Tokyo 2025では、参加企業の戦略にBoxがどのような影響を与えるのか、各社が描く変革のストーリーを紹介し、明らかにしていきます。
非構造化データの価値を変革するAIエージェント
次に登壇したのは、Boxの共同創業者兼CEO アーロン・レヴィ(Aaron Levie)。講演の冒頭で、「私たちのミッションは『人と組織の働き方を変革させること』です」と宣言しました。そして、ビジネスがAIファーストの時代に突入した今、Boxによって働き方が完全に変革されていくと述べました。具体的には、
- AIエージェントが労働力になる
- あらゆる業務フローが自動化できる
- データから瞬時に有益な情報を得る
- 顧客はより良い体験を期待している
- データガバナンスが不可欠
であり、AIの力により企業が提供するサービスや製品そのものが変化することを説明しました。たとえば、AIエージェントは単なるアシスタントではなく、人間の能力を拡張し、これまで不可能だった新しい価値創造を可能にする存在になるのです。
Box 共同創業者兼CEO アーロン・レヴィ(Aaron Levie)
隠された宝の山。企業の重要な資産である非構造化データ
次に、アーロンは非構造化データに焦点を当てました。企業が保有するデータの90%が非構造化データですが、そのほとんどが十分に活用されていません。ビデオ会議の記録、携帯電話で撮影した写真、作成したドキュメント、オンラインでの会話など、これまで「そこにあるだけで使われていない」状態だったデータは、AIの力でビジネスの価値に変えることができる宝の山なのです。
アーロンは、「私たちBoxなら、この眠れる資産を最大限に活用する世界を作れます」と希望に満ちた展望を示しました。まさにAIエージェントの活用により「完全にコンテンツの価値が変革される」と述べたのです。
同時に、現実的な課題についても言及。「今までの非構造化されたデータの管理の仕方では、これができない」と指摘し、データがさまざまなシステムに分散してサイロ化している現状により、生産性が低く、コストも高くなってしまっていると説明しました。AIがシームレスにデータを分析できない環境では、せっかくの技術革新も宝の持ち腐れになってしまいます。
Boxが提示する解決策「インテリジェントコンテンツ管理」(ICM)
この課題を解決するのが「インテリジェントコンテンツ管理」(ICM)です。重要なポイントとして「プラットフォームの中心にAIを置いています」と、Boxの差別化要因を明確にしました。
さらにBoxは、コラボレーション、セキュリティ、ワークフロー自動化、データ保護といったさまざまな機能レイヤーが、AIを中核として有機的に連携しています。そして、IBM、Salesforce、Slack、Microsoftといった主要パートナーとのエコシステム統合により、企業は既存の投資を活かしながらAIファーストの環境を構築できるのです。
Box AIエージェントエコシステムを実現する新機能
講演のクライマックスで、アーロンは今後提供予定の3つの新しい「Box AIエージェント」を発表しました。
- 検索エージェント: 高度なAIが、Box内の企業データを検索し、膨大なコンテンツの中から関連するデータを特定。どのような質問に対しても回答を得ることができる
- ディープリサーチエージェント: マーケティング資料やリサーチドキュメント、臨床試験データなどから高度な分析を実行し、調査結果からインサイトを抽出できる
- 抽出エージェント: 推論を使用し、複雑かつ長大なドキュメントからメタデータを抽出できる
さらに、A2AプロトコルやMCPサーバーをサポートすることで、MicrosoftやGoogle Cloud、Slack、Saleforce、AWS、ServiceNowなどのAIエージェントと統合し、「Box AIエージェントエコシステム」を実現させることも発表。Box AI for Microsoft 365 Copilotなら「Microsoft 365 Copilotの画面からBox AIエージェントでBoxの中でコンテンツを検索し、Copilotのチャット体験の中で回答を得ることができます」とアーロンは説明しました。これらの統合により、多くの企業がすでに導入しているさまざまなサービスから、Boxに保存された膨大な非構造化データにシームレスにアクセスできるようになり、投資効率性と技術革新を両立させる理想的なソリューションとなるでしょう。
無限の可能性に向けた、旅のはじまり
基調講演の締めくくりで、アーロンは印象深い言葉を残しました。「私たちは今、まったく新しい旅のはじまりにいます。この業界としても、そしてBoxの会社としてもそうです」
この言葉が示しているのは、AIファースト時代の到来が単なる技術的な進歩ではなく、ビジネスそのものの再定義を意味するということです。企業の90%を占める非構造化データが、ついにその真価を発揮する時代が始まったのです。
Boxがなぜ「インテリジェントコンテンツ管理プラットフォーム」を目指すのか?その理由を解き明かすBox Japan エバンジェリスト 浅見による講演は、後編をご覧ください。
キーノートの全編は、BoxWorks Tokyo & Osaka 2025サイトにて7/31までアーカイブ視聴いただけます。
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