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BoxWorks Osaka 2025 イベントレポート ~ JR西日本様、大阪府豊中市様ご登壇

 公開日:2025.08.15  Box Japan

2025年7月17日、年次フラッグシップイベント「BoxWorks Osaka2025」をリアル開催いたしました。今年のテーマは「Content + AI コンテンツの力で、ビジネスに革新を」。そのコンセプトを体現するさまざまなセッションが行われました。

ここでは、その中から来場者からの反響が大きかった、西日本旅客鉄道株式会社様以下、JR西日本)と大阪府豊中市様のセッションをピックアップし講演内容をお伝えします。(沖縄電力様ご登壇セッションと登壇企業・団体様によるパネルディスカッションは、こちら

JR西日本様: 従業員2万4千人へのBox全社展開で目指すDX基盤構築

デジタル変革の基盤としてBoxの全社導入を推進しているJR西日本様。同社デジタルソリューション本部 システムマネジメント部の小島 貴行 様と大石 佳奈様が、Box導入の背景から具体的な取り組み、そして将来への期待までを語っていただきました。

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左から: 西日本旅客鉄道株式会社 デジタルソリューション本部 システムマネジメント部 課長 小島 貴行様
デジタルソリューション本部 システムマネジメント部 大石 佳奈様

「従業員体験の再構築」を掲げBoxを導入

JR西日本様は、従業員数単体で2万4千人(連結で4万4千人)、西は博多から東は上越妙高・長野まで、2府16県という広大なエリアで鉄道事業を展開している企業です。

「コロナ禍の2020年、2021年の2年間で、当社は1兆円以上の売上を失いました」と小島様は当時を振り返り、あの未曽有の危機がデジタル変革を加速させるきっかけとなったと話します。

従来の鉄道事業中心の収益構造から脱却し、新しい収入源としてデジタル施策に注力。2020年10月にグループデジタル戦略を立ち上げ、11月にはデジタルソリューション本部を設立しました。「鉄道システムの再構築」「顧客体験の再構築」「従業員体験の再構築」の3つを柱とするデジタル戦略を推進した結果、2024年度には過去最高益の1兆7千万円を達成しています。

小島様が率いるSaaS・AIソリューションチームは、2024年6月に設立された「従業員体験の再構築」をミッションとして、この1年間で4つの主要施策を実施してきました。

「ハイブリッドワークの変革」「従業員SNSによる新たなつながりの構築」「経営に役立つ情報の可視化」、そして4つ目が「Boxの導入」です。「セキュリティの強化と働き方の多様化を両立する情報共有基盤として、Boxに注目しました」と小島様は説明します。

同社のBox利用は2019年に遡ります。当初は一部部門での限定利用でしたが、大容量ファイル管理や社外との情報共有で効果を実感し、段階的に利用範囲を拡大してきました。しかし、全社展開を検討する中で3つの大きな課題が浮き彫りになりました。

  1. コンテンツセキュリティの強化
    SharePointの容量制限により現場にNASやUSBメモリが散在し、個人のローカルPCに作業データが大量保存される状況があった
  2. 働き方改革への寄与
    写真・動画の共有手段がチャットツールに限定され、容量や保管場所に制約があった。また、休職者への情報共有が紙の郵送という非効率な状況も課題だった
  3. DX推進における基盤づくり
    容量制限のあるストレージでは十分な基盤とならず、構造化・非構造化データの課題や各種SaaSとの連携にも問題があった

「これらの課題を解決できるのがBoxでした」と小島様は語ります。

容量無制限、ランサムウェア対策を含むセキュリティ向上、7段階のアクセス権限設定による柔軟なファイル管理、そしてBox AIによる将来性への期待などから、Enterprise Plusプランで全社員IDを購入することを決定しました。

ただし、全社展開には既存のファイリングルールの見直しが必要でした。従来は「SharePointは一時的なやり取りと直近3年間のデータ、Boxは3年経過後の過年度データ」という使い分けをしていたが、「データの保存場所が分散し、どこに何があるかわからない状況でした」と小島様は課題を指摘します。

新しい方針では、SharePointは一時的なやり取りのみに限定し、保管すべきデータはBoxに格納。TeamsでもBoxに保存してからリンクを投稿するルールに変更しました。

段階的導入で現場への影響を最小化

Box全社導入の実務を担当する大石様は、「既存の運用体制や考え方を大きく変えずに、データ格納先の整理から開始しています」と説明します。

今年度(2025年度)はファイルサーバーからBoxへのデータ移行を実施し、Boxで使用できないデータは小規模ファイルサーバに移行。来年度(2026年度)以降にSharePointからBoxへのデータ移行を予定しています。

推進体制も工夫しています。「現場担当者、DX推進担当者、ファイリングルール担当の総務、そして私たちIT担当者がワンチームで取り組んでいます。本社だけでなく、支社・統括本部も含めた体制です」と大石様は強調します。

期待される効果は大きい。容量無制限のBoxを現場で利用可能とすることでNASやUSBメモリなどの廃止、ローカルPC保管からクラウドへのデータ移行を実現、Box Shield(機微情報管理として設計検証済)展開により全社レベルで機密情報を保護。働き方改革では、現場での大容量写真・動画の即時共有、全社横断的な情報共有、社外共有機能による休職者との新たな情報共有手段を確保します。さらに、Boxを基盤として据えることで、非構造化データに関するコストをロックし、DX推進を進めやすい土台をつくり、コンテンツをBoxに集約しコンテンツセキュリティの統合とコンテンツが見つけやすい環境づくりを目指しています。

Boxへの期待と、さらなる進化への要望

生成AI担当でもある小島様は、Boxが非構造化データを生成AIで構造化してくれることやBox AIが生成したインサイトを外部SaaSに提供してくれるというBox AIの可能性に注目し、「2025年6月に開催されたBoxWorks Tokyoでの発表内容には大きな衝撃を受けました」と語ります。

JR西日本 挿入画像

 

BoxのデータをRAG(検索拡張生成)で活用するために、Copilot Studioでプラグインを構築してインデックス化することを検討していましたが、BoxWorks Tokyoでの発表されたBox AI Agent for Microsoft 365 Copilotを利用すれば、Box AIがインサイトを返してくれるので、独自に研究開発する必要がなくなります。

「RAG開発におけるインデックス化にはみなさん課題感があると思いますが、開発が必要なくなるので、Box AIが賢くなるほど、より良いインサイトが得られることに大いに期待しています」と小島様は期待を込めました。

全社一丸でのBox活用による価値創出

JR西日本様のBox導入は、単なるツール導入を超えた組織変革の取り組みといえます。コロナ禍による危機を契機として始まったデジタル変革の中核に、Boxを位置づけています。

「セキュリティ強化、働き方改革、DX推進基盤構築の3つの軸で課題解決を図っています」と小島様は総括し、段階的な導入アプローチにより既存業務への影響を最小化しながら、全社一丸となってBox活用による価値創出を目指していると話します。

特にBox AIによる非構造化データの活用は、同社のDX戦略において重要な位置を占めます。「Box RelayやBox AIの機能を使い倒せるよう進めていきたい」と大石様も意欲を示します。

2万4千人という大規模組織でのBox全社導入は、多くの企業にとって参考になる取り組みであり、DX推進におけるBoxの可能性を示す重要な事例となりそうです。

大阪府豊中市様: 職員主導で実現した3,000ユーザーに対するBox全庁展開

大阪府豊中市様が3年間かけて実現したBox全庁展開の舞台裏を、同市都市経営部 デジタル戦略課の泉谷 亮様と後藤 大貴様に詳しく語っていただいた本セッション。35ユーザーから始まった小さな実証実験が、職員3,000人へライセンス展開した大規模導入に至るまでの成功と苦難の軌跡を追います。

3C4A9389左から: 豊中市 都市経営部 デジタル戦略課 泉谷 亮様、後藤 大貴様

Box導入による業務効率化の効果

大阪府北部に位置する人口約40万人の中核市である豊中市。市の組織規模は病院や消防局を含めて約5,000名の職員が在籍し、このうち事務職員は約3,000名。2025年度からは事務職員すべてにBoxライセンスの展開が完了している状況です。

導入前はオンプレミスのファイルサーバーを運用していたが、DX化の進展に伴いファイルサーバーの容量が逼迫し、ファイル共有にも多大な工数を要していました。

「Box導入により市役所の業務工数がかなり削減されました」「まだBox RelayやBox AIを積極的に活用できていませんが、基本機能だけでこれだけのコスト削減ができています。本当に導入してよかったと実感しています」と効果を強調する泉谷様は、3つの領域でBox運用を行っていることを冒頭に説明しました。

豊中市 フォルダ構成

オレンジ色の外部共有領域は、豊中市テナント以外のユーザーとのファイル共有に使用。「今日の講演資料もここに置いてBoxさんと共有しています」と実例を示します。青色の内部共有領域は、豊中市テナント内ユーザーのみがアクセス可能で、契約書類や企画資料、会計資料など内部データを格納。緑色の一般公開領域は、共有リンクで不特定多数にアクセス可能なダウンロード用領域として活用しています。

このような運用に至るまでの3年間の導入プロセスを以下のように紹介しました。

2022年: 35ユーザーでのスモールスタート

豊中市様のBox導入は2022年、わずか35ユーザーからスタートしました。当時は新型コロナウイルス感染拡大の時期で、外部ユーザーとのファイル共有ニーズが急速に増加していました。「メール添付では容量的にも回数的にも追いつかない状況でした」と後藤様は当時を振り返ります。

2023年: 約70ライセンスでファイルサーバー移行の検証

翌年には情報システム部門職員のみで約70ライセンスに拡大し、ファイルサーバーからBoxへの移行検証を本格化させました。この時期の最重要課題はフォルダ構成の設計でした。「ユーザーの抵抗感を最小化するため、極力従来と同じような使い方ができるよう、フォルダ名や第1階層の構成を慎重に検討しました」と後藤様は説明します。この年にBox営業担当者が替わり、1,000ライセンス規模の大規模導入に向けた内部調整が本格化し「大規模展開には企画力や調整力が非常に重要だと感じました」と当時を振り返ります。

2024年: 全庁展開に向けた最終調整

2024年に入ると、全ライセンス導入の予算確保に成功し、他部局との最終調整段階に入りました。特に行政文書管理部署との調整が重要な課題となりました。

他部局調整で直面した課題

全庁展開において最も苦労したのが、情報システム部門と行政文書管理部門の調整でした。「個人フォルダを作成する際、行政特有の課題に直面しました」と泉谷様は説明します。行政が作成した文書は職員個人のメモであっても「行政文書」として扱われ、住民からの開示請求対象となる可能性があるからです。

当初は個人フォルダに保存されたファイルを「非行政文書」として位置づけ、コラボレーション機能を自由に使える設計としていました。しかし行政文書担当部門から「コラボレーションできる時点で行政文書になる」との指摘を受け、個人フォルダをコラボレーション可能なものと不可能なものに分割せざるを得なくなりました。

「第1階層は限りなく用途を分かりやすく、かつ数を少なくするのが理想でした。調整不足によりフォルダ構成が崩れてしまいとても残念でした」と泉谷様は率直に語ります。「もう少し早く全体調整をかけていれば、もっと良い案が出たのではないか」と振り返り、「導入検討される際は、早めに全体の話を聞いていくことが重要です」とアドバイスします。

Box Shuttleによるファイルサーバー移行

豊中市様では約100の組織それぞれにフォルダがあり、3年計画での段階的展開を予定していたため、移行コストの最小化が課題でした。転機となったのがBoxからの情報提供でした。「Box Shuttleというライセンス内で使えるツールがある」との情報を受け、委託に出さず職員2人で各課のファイルサーバー移行を実施することを決定しました。

その上で、豊中市様では特殊な環境での運用が必要でした。ファイルサーバーはLGWAN接続系ドメインのWindowsサーバに配置されており、Box Shuttleを実行する端末はインターネット接続系に配置する必要ありました。さらにドメインが異なるという複雑な環境での移行となりました。

後藤様は「ドメインをまたいで転送するという状況で、予期せぬエラーが多数発生しました」と苦労を語ります。移行時の具体的なトラブル事例は次の通りです。

  • 端末設定のミス
    「端末が電源につながっていても30分でスリープに入る設定を見落とし、自宅に帰ってテレワークで確認したら動いていませんでした。本当に初歩的なミスです」
  • 権限設定の問題
    「ファイルサーバーの管理者が、特定のフォルダだけアクセス権を持っていないという予期せぬ状況がありました」
  • 処理速度の予測困難
    「日中の大量ファイル更新により、想定より転送速度が出ず、1週間の予定が延期になることもありました」

これらの経験から後藤様は「土日などの非営業日を選んで移行することが重要」とアドバイスします。

また、移行運用の工夫として、Box Shuttleの自動スケジュール機能を活用し、業務終了後に転送を開始する運用を確立しました。ただし、「私たち職員の勤務体制から帰宅後にエラーが出た場合、即座に対応できないこともありました。転送が正常に動作することを確認してから帰ることが重要です」と注意点を指摘します。そのため、移行は2回に分けて実施。1回目で全体転送を行い、2回目はファイルサーバーを読み取り専用に変更してから差分のみを転送し、完全移行を実現しました。

さらに、大規模展開で最も複雑だったのがユーザー管理でした。豊中市様では基本的に組織メールのみの運用で、個人メールアドレスがあるのは管理職以上という環境でした。「人事給与システムをマスタデータとして、ユーザー管理ツールを経由してオンプレミスのActive Directory環境にユーザーを同期させる既存の仕組みを活用しました」と泉谷様は解決策を説明します。しかし、新たな問題が発生しました。作成した個人メールアドレスが実在しないため、Boxの初回利用時に送信されるアクティベーションメールを受信できませんでした。「メールセキュリティソフト側に謎のメールとして滞留していました。そのメールに情報システム部門が代理でアクセスし、アクティベーション実施は非現実的。どう解決すべきか悩んでいました」と泉谷様は当時の状況を振り返ります。

この課題もBoxからのアドバイスで解決しました。「SSOモードにすればアクティベーションをスキップできる」との情報を受け、既に導入済みのIDaaS(Identity as a Service)を活用してSSO設定を行い、問題を解決しました。

成功の要因と自治体のベストプラクティスへの考え方

豊中市様の取り組みは、Box社が自治体向けに紹介する「豊中モデル」として活用されるまでになっており、多くの自治体にとって参考となる貴重な事例となっています。職員主導でのシステム導入における技術力と調整力の重要性、そして段階的アプローチの有効性を示す成功事例です。

その成功要因について、泉谷様は自らの役割を明確に位置づけます。「そもそも市役所職員はIT系やSaaS系の知識がない状態から、私たちのような部門で働き始めます。前提知識はベンダ様に埋めていただきますが、自組織の文化や事務の進め方は我々が一番よく知っています。そのため、提供されるサービスを自組織にどううまくはめ込むかという重要なポイントで、技術と組織を紐付ける役割を担えるのは担当職員です」。

一方でバランスの重要性も指摘します。「本来は委託すべき領域まで職員がやりすぎると、ツールの運用が属人化してしまい、その人がいなくなった時の安定稼働リスクが高まります」。

このような考え方をもとにした豊中市様の3年間にわたるBox導入プロジェクトは、職員主導による段階的アプローチの成功例といえます。35ユーザーから始まった小さな実証実験が、現時点では事務職員3,000人規模の全庁展開に発展した背景には、技術的な課題解決と組織的な調整を両立させた職員の努力がありました。

泉谷様は最後に重要な教訓を語ります。「組織メールしかない環境でも、私たちのような形でしっかりと運用できます。ただし、基礎設計時点で構築環境に何が足りないのかをしっかりと把握し、設計していくことが非常に重要です」と。

沖縄電力様ご登壇セッションとご登壇の3社・団体様によるパネルディスカッションの模様は、こちらをご覧ください。

BoxWorks Osaka 2025のセッション全編は、BoxWorks Tokyo & Osaka 2025サイトにて8/29までアーカイブ視聴いただけます。

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