このプレイブックは、企業向けAIの可能性を実際のビジネスに活かすための2部構成のガイドです。パート1では、基礎的な内容を学べます。AIエージェントとは何か、AIエージェントの構造、企業に最適なユースケースを特定する方法を説明します。パート2は、実践編です。Box AI StudioによるAIエージェントの設計・構成・展開方法、インストラクションの作成とコンテンツへの組み込みまで、幅広い内容を学ぶことができます。これら2つのセクションでは、安全で信頼性が高く、企業全体で活用できるAIエージェントを構築する理由と方法の両方を網羅しています。
はじめに: AIは、ツールから同僚に
仕事の本質が変化しています。ファイルやフォルダを延々と探し続ける検索とクリックという従来のモデルは、「質問と創造」という新しいパラダイムに取って代わられつつあります。しかし、この変化を推進するには、AIが企業の最も貴重な資産である企業コンテンツにアクセスする必要があります。
課題は、こうした重要な情報のほとんどが、契約書、プレゼンテーション、調査レポート、動画といった非構造化データで閉じ込められたダークデータであることです。非構造化データは、受動的で、検索が難しく、自動化の恩恵を受けていません。
インテリジェントコンテンツ管理プラットフォームに組み込まれた安全なネイティブAIレイヤーであるBox AIが、まさにこの問題を解決します。非構造化コンテンツを実用的なインテリジェンスに変換します。
Box AIを使用すると、次のことができます。
- 検索、要約、作成を統合するAIを活用したスペースで、よりスマートに仕事ができます
- Box内のコンテンツからシームレスにデータを抽出できます
- すべてのアプリに拡張できる安全なAIプラットフォーム レイヤーを使用して、テクノロジースタック全体にインテリジェンスをもたらします
そして、データとビジネス成果の間のギャップを埋めることができます。これらはすべて、Box AI Studioの専用AIエージェントによって実現できます。
第1章: Box AIエージェントの構造
すべてのBox AIエージェントは、目的を持って設計され、高度なモデルを搭載し、企業コンテンツを基盤としています。Box AIエージェントが効果的で信頼できる理由は次のとおりです。
1. 最適なモデルで思考する
- Box AIエージェントは、BoxによってオーケストレーションされたOpenAI、Anthropicなどの最先端の基盤モデルを使用します
- それぞれのユースケースに最適なモデルを組み合わせることで、精度、推論、ビジネスとの整合性を最大限に高めます
2. 特定の目的に合わせて構築されている
- すべてのBox AIエージェントは、90ページものレポートの要約から、契約条項の抽出、コンプライアンスリスクの特定まで、明確な目的を持って業務に取り組みます
- これにより、アウトプットはビジネスニーズに的確かつ関連性が高く、実用的なものになります
3. 綿密な計画にしたがう
- Box AIエージェントは、目的を達成する方法を段階的に定義した構造化されたインストラクションにしたがって動作します
- インストラクションでは、フォーマット、トーン、ワークフローなどを指定できるため、業務やユースケース全体で一貫した結果が得られます
4. 機能とツールを使用してアクションを実行する
- Box AIエージェントは、推論だけでなく、要約、分類、Q&Aなどのスキルを適用し、Boxネイティブまたは外部APIを呼び出します
- Box AIエージェントは、コンテンツを理解するだけでなく、業務フローの中で直接成果を生み出します
5. コンテンツを安全に操作する
- Box AIエージェントは企業コンテンツに基盤とし、権限に基づいて安全に検索を実行します
- ユーザーは、ユーザーが閲覧可能なコンテンツにのみアクセスでき、Box AIエージェントは、常にBoxのセキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスの境界内で動作します
6. 透明性があり、お客様が管理できる
- すべてのBox AIエージェントは、可視化された監査可能なインストラクション、アクション、アウトプットを備え、企業全体で監視できます
- 人間による制御とガバナンスにより、信頼性、説明責任、そして責任ある使用を大規模に確保できます
Box AIエージェントの6つのメリット
すべてのAIモデルが答えを提供できます。Box AIエージェントは、エンタープライズグレードの基盤上に構築された信頼性が高くスケーラブルなAIエクスペリエンスを提供します。
- 設計段階からセキュリティを確保: Box AIエージェントにはガバナンスが組み込まれており、Boxのきめ細かな権限とアクセスポリシーを自動的に継承します
- 真実に基づく: 指定されたコンテンツのみに基づいて動作するBox AIエージェントが、ダークデータを意思決定に必要なインテリジェンスに変換します。ハルシネーションを事実上排除し、ビジネスの現実に基づいた回答を確実に提供します
- コンテキストを認識: Box AIは、コンテキストを認識します。AIエージェントはファイルの分類とメタデータを活用して適切なアクションを実行します(たとえば、「提案書の草案」と「締結済みの契約書」の違いを理解します)
- アクション指向: Box AIエージェントはチャットの域を超えて、質問、要約、生成の機能を提供します。受動的なコンテンツを能動的な業務プロセスに変換します
- ガバナンスと監査に対応: すべてのBox AIエージェントのアクティビティはログに記録され、明確な監査証跡が提供されます。また、Box AIエージェントを構築、使用、変更できるユーザーを完全に制御できます
- ローコードで大きな効果: Box AI Studioを使用すれば、開発者だけでなく、管理者やビジネスユーザーも必要なカスタムAIエージェントを作成できるので、価値実現までの時間を短縮できます
第2章: Box AI Studioの内部構造
Box AIエージェントが「何を(What)」行うかだとすると、Box AI Studioは「どのように(How)」行うかです。Box AI Studioは、Box内のコンテンツと直接連携するカスタムBox AIエージェントを設計、テスト、展開するためのセキュアなエンタープライズグレードのキャンバスです。まるでワークショップのようなものです。ビジネス上の課題や目的を提示すれば、Box AI Studioがそれらを実際の機能するBox AIエージェントへと変えるためのツールを提供します。
Box AI Studioの中核は、大規模言語モデル(LLM)の高度な機能と企業の日常的なニーズという2つの世界を橋渡しするように設計されています。テキスト処理能力に優れているだけでなく、ワークフローで真に役立つBox AIエージェントを作成するための基盤を提供します。たとえば、90ページにも及ぶエンジニアリングレポートの要約や契約書からの義務の抽出、企戦戦略資料の作成ができます。
Box AI Studioは、次のことを可能にします。
- 適切なインテリジェンスを選択: Box AI Studioでは、最先端のモデルにアクセスして、ユースケースに対して直接テストできます。インストラクションを精緻化し、どのモデル(またはモデルの組み合わせ)がビジネスに最適な推論、精度、アウトプットを提供するかを判断できます。
- コンテンツにBox AIエージェントを統合: Box AI StudioのBox AIエージェントは、何もないところから回答を生成するわけではありません。Box AIエージェントは、Boxにすでにあるコンテンツ(ドキュメント、プレゼンテーション、スプレッドシート、PDFなど)にしっかりと統合されており、すべてのステップで権限を遵守します。Box AIエージェントは特定のユーザーが閲覧可能なコンテンツにのみアクセスできるため、迅速性のためにガバナンスが犠牲になることはありません。
- 目的に基づいた設定: すべてのBox AIエージェントは、要約、Q&A、分類、リスクの特定、コンテンツの生成など、明確で具体的な目的に基づいて構築できます。Box AI Studioは、目的を設定するためのガイドを提供しているので、Box AIエージェントの目的は常に具体的なビジネス成果に結び付けられます。
- 推論を形作る: インストラクションこそが、魔法が起こる場所です。Box AI Studioでは、ステップバイステップのロジック、出力形式、トーンを記述、改良することで、Box AIエージェントに思考方法を教えることができます。時間をかけて反復することで、さまざまなユーザーやユースケースにわたって、より正確で一貫した結果を得られるようになります。
- Box AI APIまたはBox MCPサーバーを介してカスタムAIエージェントを拡張: Box AIエージェントは、中核的な推論機能に加えて、Box AI APIまたは外部APIを介して使用することもできます。コンテンツを分析するだけでなく、アクションをトリガーにしてタスクを自動化することも可能です。
- 実験してから、スケールアップ: Box AI Studioは、反復的な開発を念頭に設計されています。管理者は、Box AIエージェントのプロトタイプを作成し、実際のコンテンツでテストし、その動作をすぐに確認できます。改良が完了したBox AIエージェントは、企業全体に展開し、コンテンツが存在するあらゆる場所で活用できます。
Box AI Studioは、抽象的なAI実験のためのツールではありません。Boxが得意とするセキュリティとコンプライアンスに基づいて、実際の業務を前進させるAIエージェントを作成するためのツールです。「契約書のレビューをスピードアップするには、どうすればいいのか?」から「会議前に営業部門に適切なインサイトを提供するには、どうすればいいのか?」まで、企業のアイデアをアクションに変える場です。
第3章: AIエージェントに適切なユースケースを見つける
すべてのタスクにAIエージェントが必要なわけではありません。最適な候補となるのは、AIによる高速化、一貫性、大量処理を実現できるタスクです。企業がAIエージェントの真の価値を提供できる場所を特定する方法をいくつか紹介します。
1. 反復的で知識集約型のタスクを探す
従業員が毎週何時間もかけてレポートのレビュー、契約書のスキャン、大容量ファイルからのインサイトの抽出に時間を費やしている場合、AIエージェントが面倒な作業を引き受けることができます。たとえば、法務部門は、NDAの一次審査を自動化して、弁護士が介入する前にリスクの高い条項にフラグを立てることができます。
2. スピードが重要な瞬間を狙う
締め切り、顧客とのミーティング、四半期ごとのレビュー、規制当局への提出など。これらはプレッシャーのかかる瞬間で、インサイトに即座にアクセスできるかどうかが結果が左右する可能性があります。営業担当者が顧客とのミーティングに向けて、カスタマイズされたブリーフィング資料を数分でまとめられることを想像してみてください。
3. コンテンツの軌跡をたどる
AIエージェントの能力は、アクセスできるコンテンツによって決まります。情報源となる資料(計画書、プレイブック、トランスクリプト、契約書、データセット)がすでにBoxに保存されている状態から、ワークフローから開始しましょう。たとえば、2027年度の戦略を起草するマーケティング担当者は、AIエージェントに過去のキャンペーン、顧客からのフィードバック、市場調査から得たインサイトを1か所にまとめるように依頼できます。
4. 意思決定に集中し、気を散らすものを排除する
最適なユースケースは、より高度な業務が行えるように従業員を解放します。200ページもの試験データをくまなく調べる代わりに、主要なリスクと推奨事項をまとめた1ページの研究結果サマリーが得られることを想像してみてください(AIエージェントが判断を取って代わるのではなく、不要な情報を一掃してくれるのです)。
5. 小さく始めて、大きく育てる
大規模な展開は必要ありません。手間がかかっているワークフローを1つ選び出し、AIエージェントを試験的に導入し、その後、隣接する部署への展開していきます。適切なユースケースは自然に広がります。財務部門がAIエージェントを使用して月次レポートパックを作成していれば、他の部門も導入したくなるでしょう。
AIエージェントにとっての「スイートスポット」は、人間の専門知識と大量かつ重要なコンテンツが出会う場所です。AIはリスクや混乱を招くことなく、業務の成果を高めることができます。
AIエージェントとは何か、AIエージェントの構造、適切な機会を見つける方法という基本を理解すれば、Box AI StudioでBox AIエージェントの構築するために基礎知識が身に付きます。
プレイブックのパート2では、インストラクションの作成、Box AIエージェントのコンテンツ基盤の構築、アウトプットのテスト、そして企業全体への安全な展開まで、実践的なウォークスルーを通じて、その「方法」を紹介します。
※このブログは Box, Inc 公式ブログ(https://blog.box.com/)2025年9月10日付投稿の翻訳です。
著者: Meena Ganesh, Box AI Senior Product Marketing Manager, Box
原文リンク: https://blog.box.com/enterprise-ai-agents-playbook-part-i-learning-how-unlock-agentic-potential
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