パート1では、基礎知識として「AIエージェントとは何か、AIエージェントの構造、企業に適したユースケースを特定する方法」を説明しました。
いよいよ実践編です。このセクションでは、Box AI StudioでBox AIエージェントを設計、構成、展開する手順を順を追って説明します。パート1で学んだ概念を具現化するために、インストラクションの作成、コンテンツへの接続、アウトプットのテスト、企業全体への展開を行っていきます。
第1章: ビジネス対応のAIエージェントを数分で構築する方法
Box AI Studioを使用すれば、6つの簡単なステップで強力かつ安全なBox AIエージェントを構築できます。
ステップ1: 基盤を選択する(LLMを選択する)
安全なBox AI Studio環境内で、Boxがサポートする最先端のモデルを柔軟に使用できます。
ステップ2: エージェントに機能を付与する(アクションを定義する)
Box AIエージェントが実行できることを定義します。質問(Q&A用)、要約(ダイジェスト用)、生成(コンテンツ作成用)などの特定の機能を付与します。これにより、Box AIエージェントは承認されたアクションのみを実行します。
ステップ3: 明確なインストラクションを提供する
これはBox AIエージェントの職務記述書です。単なる単一のプロンプトではなく、Box AIエージェントの目的と動作全体を定義する包括的な指示です。ビジネス目標をBox AIエージェントの明確な計画に変換するには、次の5つの構成要素をテンプレートとして使用しましょう。
Box AIエージェントへのインストラクションの構成要素
1️⃣ 目的 – Box AIエージェントは何を解決しますか?
主要なミッションを定義します。これはAIエージェントの「存在理由(Why)」であり、ビジネスの成果に直接結びついている必要があります。
- 例:「あなたの目的は、契約のレビューを迅速化し、会社の法的リスクを軽減することです。」
2️⃣ コンテキスト – 何を知る必要がありますか?
Box AIエージェントの動作環境と処理する情報の種類を説明します。これにより、コンテンツの重要性を理解することができます。
- 例:「法務部のアシスタントとして、潜在的なベンダーからの新しいマスターサービス契約書を分析します。」
3️⃣ アクション – 何をすべきか?
Box AIエージェントが実行する必要がある具体的なタスクをリストアップします。これらは操作の動詞であり、多くの場合、前のステップで付与した機能に対応します。
- 例:「ドキュメントをスキャンし、重要な条項を特定し、標準ポリシーと比較し、ドキュメントのメタデータにリスクレベルのタグを付けます。」
4️⃣ ルール – どのようなガイドラインにしたがいますか?
境界と制約を設定します。Box AIエージェントに、何を優先し、何を無視するか、結果の安全性、関連性、信頼性を確保するためにどのように行動すべきかを指示します。
- 例:「承認されたポリシーから逸脱する責任条項またはデータプライバシー条項にフラグを立ててください。付録にある標準用語は無視してください。トーンはフォーマルかつ客観的でなければなりません。」
5️⃣ アウトプット – 期待される結果は何ですか?
最終成果物について説明します。これにより、Box AIエージェントは一貫性があり有用な結果を提供し、非構造化コンテンツを構造化されたインサイトに変換して、より迅速な意思決定を可能にします。
- 例:「法務部の最終レビューに備えて、非準拠条項のみの箇条書きした簡潔なリストを新しいBox Notesに生成してください。」
💡 Box AIエージェントはコンテンツを処理するだけではありません。コンテンツを理解し、それに基づいて行動し、そこからインサイトを引き出します。
ステップ4: テストと改良(Box AIプレイグラウンドを使用する)
直感的で統一されたワークスペースでBox AIエージェントと対話します。Box AIプレイグラウンドでは、プロンプトをテストし、エージェントの回答、Box AIエージェントが使用した情報源、基盤となるロジックを確認できるため、迅速かつ反復的な改良が可能になります。
ステップ5: Box AIエージェントを展開する
満足のいく結果が得られたら、Box AIエージェントを展開して、活用します。
第2章: テクノロジースタック全体にBox AIエージェントを展開する
Box AIは、企業全体のコンテンツ認識型AIの結合組織として機能するセキュアなネイティブAIレイヤーです。信頼性を損なうことなく、ユーザーが作業する場所にBox AIエージェントを展開できます。
パス1: 部署で作業する場所へのネイティブ導入
Box AIエージェントをBox UI内で直接利用できるようにすることで、コンテンツライフサイクルのあらゆる部分を加速できます。
- Box Notes: 「提案書エージェント」を呼び出して、共同作業中にコンテンツの下書きを作成できます
- Box Hubs: ナレッジHubを公開して、「リサーチエージェント」に業務に関する質問に答えてもらえます
パス2: セキュアなAIプラットフォームレイヤーを介したカスタム導入
Box AI APIを使用して、Box AIエージェントをあらゆるアプリケーションに組み込むことができます。Box AIエージェントのロジックとコンテンツの基盤はBox内に安全に保管されているため、Slack、Salesforce、ServiceNowなどのワークフローにインテリジェンスを導入できます。
これにより、AIエクスペリエンスがどこで提供されているかに関係なく、コンテンツの権限、コンプライアンスポリシー、そしてデータレジデンシーを尊重する真のAIエージェント間オーケストレーションが可能になります。
第3章: 測定、改善、拡張
導入は始まりに過ぎません。最も成功するAI戦略は、高速で信頼性が高く、スケーラブルなAIエクスペリエンスを提供するための継続的な改善の好循環に基づいて構築されます。
- 効果測定: Box AIエージェントの使用状況を追跡し、それをビジネス成果(時間の節約、リスクの軽減、業務プロセスの加速)に結び付けます
- フィードバックの収集: シンプルなフィードバックツールを使用して、Box AIエージェントのパフォーマンスを把握し、改善の余地がある領域を特定します
- プロンプトの調整(A/B テスト): Box AIプレイグラウンドを使用して、Box AIエージェントを簡単に調整して再展開し、より優れた正確な結果が得られるようにします
- 導入の促進: 成功したBox AIエージェントを社内に共有し、企業全体にその効果を拡大していきます
第4章: AIの活用事例
大手建築コンサルティング会社が、Box AIエージェントを活用して資材検査レビューを効率化した方法
課題: レポート作成に費やされる時間
この建築コンサルティング会社の技術スタッフは、常に同じ課題に直面していました。毎月、さまざまな試験機関から、複数のプロジェクトに関する90ページを超える資材試験レポートを受け取っています。材料コンポーネントの抽出、問題の特定、主要なリスクを手作業でまとめており、時間がかかっていました。この毎月の作業では、関連するすべてのインサイトを一貫して特定し、建設の進捗状況への影響を最小限に抑えながら意思決定と是正措置を講じられるようにするため、高いレベルで長時間にわたる中断のない集中力が必要でした。
Box AI Studioでマテリアルエージェントを構築
意見の質を維持しながら、この問題に取り組むのに必要な時間を大幅に短縮するために、Box AI Studioでマテリアルエージェントを設計しました。彼らは、言及されたすべての材料を自動的に識別し、その状態を要約し、問題にフラグを立てるという明確な目的を設定しました。そして、推論方法、出力形式、透明性に関するインストラクションを作成しました。実際のレポートを使用した反復テストにより精度を確保し、権限を意識した設定によってガバナンスおよびセキュリティポリシーに準拠しました。
数時間が数分に: すぐに要約を入手
マテリアルエージェントの導入後、ワークフローは劇的に変化しました。技術スタッフは、簡潔で実用的な要約を数時間ではなく数分で受け取れるようになり、 対応が必要な点をすぐに把握し、意思決定を迅速に行い、より価値の高い分析に集中することができるようになりました。従業員はスピードと信頼性の両方に自信を持てるようになり、現在進行中の最も複雑な商業建設プロジェクトの一部において、Box AIエージェントは毎月のレビュープロセスに不可欠な存在になりつつあります。
次のステップ: Box AIエージェントの活用
パート2では、基礎の理解から、Box AI StudioでBox AIエージェントをどのように設計、構成、展開するかを解説しました。目的の定義、インストラクションの作成、コンテンツへのBox AIエージェントの組み込み、信頼できる実用的なインサイトが得られるまでテストする方法を学びました。
真の力は、理論と実践が融合した時に発揮されます。Box AIエージェントライブラリの事前設定済みテンプレートを使用して独自のBox AIエージェントをすぐに構築できるので、このプロセスを加速できます。テンプレートは、財務、契約、臨床試験、カスタマーサポートなどのさまざまなワークフローをカバーしており、Box AI Studioに直接コピーしてすぐに使えるインストラクションも含まれています。Box AIエージェントを独自のコンテンツに適応させ、すぐに価値を提供しはじめましょう。
Box AI Studioは、従業員がすぐ構築して、カスタマイズして、拡張できるツールです。このプレイブックからの知見をBox AIエージェントライブラリのリソースと組み合わせることで、コンテンツをインテリジェントなワークフローに変換し、企業全体に真のインパクトをもたらすために必要なものがすべて揃います。
質問はありますか?手助けが必要ですか?
問題が発生したり、Box AIエージェントを改良するためのヒントが必要だったり、Box AI Studioについて質問がある場合は、Box Communityにアクセスしてみてください。そこでは、エキスパートや同僚からのベストプラクティスを通じて、Box AIエージェントを最大限に活用する方法を学ぶことができます。
結論: AIエージェントファーストの企業になる
企業が検索ではなくインテリジェンスで運営される未来を想像してみてください。すべての従業員が、コンテンツを競争優位性へと変える専門のAIエージェントによってサポートされる未来です。
- コラボレーションと創造のために設計されたAIを活用したスペースで、よりスマートに働くことができます
- 非構造化データをアクションへと変換し、ビジネスを前進させるワークフローの自動化を推進できます。
- テクノロジースタック全体にインテリジェンスをもたらし、単一のセキュアなAIプラットフォームレイヤーがオーケストレーションします
Box AIは、非構造化データを実用的なインテリジェンスに変換することで、未来の働き方を実現するために必要なコンテキスト、柔軟性、信頼性を備えた基盤を提供します。
コンテンツを活用し、AIエージェントファーストの企業になる時が来ました。
AIエージェントを構築する準備はできていますか?
Box AIが企業コンテンツを企業全体で実用的なインテリジェンスに変換する方法を確認いただくか、Box Japanの営業担当者にお問い合わせください。
※このブログは Box, Inc 公式ブログ(https://blog.box.com/)2025年9月10日付投稿の翻訳です。
著者: Meena Ganesh, Box AI Senior Product Marketing Manager, Box
原文リンク: https://blog.box.com/enterprise-ai-agents-playbook-part-ii-designing-maximum-impact-box-ai-studio
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