企業の膨大なデータを格納するためにクラウドストレージ(オンラインストレージ)が普及してきています。しかし、クラウドストレージの活用にはどのようなメリットがあり、またどのようなリスクを抱えているのか詳細に理解している人は少ないのが実情のようです。
そこで、クラウドストレージの概要や活用するメリット、選び方について詳しく説明していきます。
クラウドストレージとは
クラウドストレージとは、クラウド上のファイル保管サービスのことです。良く知られているものだとBoxやGoogle ドライブ、Microsoft OneDriveなどがあります。コンシューマ用だとAppleのiCloudストレージを使っている人もいるかも知れません。
インターネット上のサーバーにアクセスし、必要なファイルを保管・取り出しできます。個人、企業を問わずに利用されており、無料で利用できるサービスも多くあります。企業で主に利用されているのは、セキュリティや管理機能を備えた法人版のクラウドストレージサービスです。
クラウドストレージが普及した理由
クラウドストレージが普及した理由として、コンピューターの性能向上に伴って企業や個人で大容量のファイルを扱う機会が増えたことが挙げられます。特に写真、音声、動画などのファイルは数GB程あることも珍しくないため、従来利用されていたCDやUSBメモリ、特にメールではデータのやりとりが難しくなってきたのです。
さらにファイルをやりとりする際の利便性も要因のひとつです。USBメモリなどの物理的なデバイスだと、持ち運び・送付の手間やコストがかかりますしセキュリティ上のリスクがありますが、クラウドストレージであれば厳格な権限設定のもとインターネット上でファイルをやりとりできるため、利便性が高く、利用者も増加しています。コロナ禍で人の往来が制限され、物理的なモノを渡しにくくなり、オンラインで共有する必要が出たことも利用拡大を後押ししています。
また最近ではコスト削減や効率化、ガバナンス強化を目的として、自社サーバーでの運用からクラウドサービスへ移行する動きが広がっています。それにより、今までは社内サーバーで保管・利用していたファイルをクラウドストレージへ移行する企業が増加し、クラウドストレージの普及を加速させています。
クラウドストレージ活用のメリット
法人向けクラウドストレージを活用するメリットとして主に以下の3点が挙げられます。
社内にある全ファイルの一元管理ができる
1つ目は、ファイルの一元管理が容易になることです。自社でサーバーを運用する場合、多拠点展開をしている企業では事業所ごとにサーバーを立てて運用していることがあります。すると同一ファイルを事業所ごとに保管する必要が出てくるなど管理が煩雑になり、非効率的です。
クラウドストレージの導入により、自社内のファイルを集約し一元管理できるので、重複してファイルを保管せずに済み、業務効率化の促進に繫がります。全社でデータ共有ができることも利点です。
場所・デバイスを問わずにファイルの利用ができる
クラウドストレージは名前の通りクラウドサービスなため、インターネットが接続できる環境であれば、いつでも、どこでも、どのデバイスでも利用することができます。
自社サーバーだと社外からは基本的に社内情報にアクセスできませんが、クラウドストレージなら、テレワークであっても、職場にいるのと同じように必要なファイルにアクセスできます。
また営業担当者が外出先からクラウドストレージ上の見積ファイルをスマホで閲覧する、タブレットで提案書を表示してプレゼンする、といったことも可能なため、例えばオフィスに書類を印刷しに戻らなくて良い、打ち合わせの間際まで最新情報にアップデートできるといった業務効率化や担当者の負担軽減にもつながります。
自動のバックアップ機能でデータ紛失を防げる
自動バックアップ機能を備えたサービスであれば、手動でファイルをバックアップする必要がありません。保存忘れなどのヒューマンエラーもなくなり、社内のシステム担当者の業務負担や作業時間を軽減できます。
また世代管理(版管理)ができるサービスであれば、意図して古いバージョンのファイルを使いたいといったことに加え、誤って書き込まれたり、アップデートされた場合でも元のファイルを取り出すことが可能です。
クラウドストレージ活用の誤解
クラウドストレージにはいくつかの誤解もあるので、事前にきちんと把握しておくことが重要です。ここでは代表的なものを3つご紹介します。
セキュリティリスクがある?
クラウドストレージは誰でも使えるインターネット上にファイルを保管しており、自社管轄ではないことから、悪意のある第三者に不正アクセスされ情報が漏洩する可能性があると思われています。
もちろん、運用する側でデータセンターに自由に入れるとか、管理パスワードを使いまわすなど不適切な管理をしているようなサービスのものは、当然セキュリティリスクが高まります。その一方で、セキュリティ対策はユーザー企業が1社で行うより、「人、物、金」のコストを多く掛けられることもあり、遥かに高いセキュリティを実施しているサービスがほとんどです。
カスタマイズ性が低い?
クラウドストレージはクラウドサービスとして提供されるため、個別のニーズに合わせたきめ細かなカスタマイズをすることができません。そのため自社でサーバーを運用するのに比べるとカスタマイズの自由度は低くなります。
ただし、これもオプション機能が豊富に用意されていたり、クラウドストレージによっては、サービス事業者が提供するWeb APIでクラウドストレージと他のサービスを連携するといったカスタマイズが可能で、必ずしもカスタマイズ性が低いとは言えないのです。
近年では、外部アプリケーション連携などのカスタマイズをサポートする企業も増えています。例えば法人向けクラウドストレージサービスのBoxでは、豊富に用意されているWeb APIを活用することで、クラウド、オンプレ問わず様々なシステムとの連携といったカスタマイズができます。例えば、業務系で良く行われている販売システムや帳票発行システム、電子契約といったものは良く連携されているようです。
システム障害が多い?
なんらかの要因でシステム障害が発生した場合、復旧作業はサービス提供側が行います。短時間で解消することがほとんどですが、半日以上サービスが利用できない場合も過去にありました。例えば2020年8月にはGoogle ドライブで障害が発生し、半日あまりファイルがアップロードしにくくなるといった不具合が起きました。クラウドサービスのみでデータを保管していた場合、有無を言わさず業務が停止してしまいます。ただ、これは自社管理のオンプレのファイルサーバー等でも同様で、クラウドストレージに限ったことではないと感じた方も多いと思います。クラウドサービスは1社のためだけではなく多くの企業が使っていることもあり、影響範囲も大きいためニュースになることもその分増え、耳にすることも多くなります。それ故にシステム障害が多いように思う方もいるようです。
このような障害は非常に稀で、頻繁に起こることではありませんが、導入前にはSLAの確認や過去の稼働状況などを確認すると良いでしょう。
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クラウドストレージの選び方
自社で実際にクラウドストレージを導入するにあたっては、どのような点に注意して選べばよいのでしょうか。ここでは4つのポイントを紹介します。
データ容量で選ぶ
もっともシンプルなのは、必要なデータ容量で選ぶ方法です。自社で保管しているファイルを移行できるだけのデータ容量を確保できるかを確認します。ファイルの種類が文書、画像、映像などのどれに当たるかにより、求められるデータ容量は大幅に異なります。特に音声や動画ファイルを大量に保管する場合にはかなりのデータ容量が必要になるので、自社で扱っているファイルの種類を事前に把握しておく必要があります。
全体のファイル容量があまりに多い場合には、容量無制限のサービスを利用するのがおすすめです。
またストレージにアップロードする際にファイルの容量制限を設けているサービスもあるため、個別ファイルの最大容量も把握しておくことが重要です。
情報セキュリティで選ぶ
しっかりとしたセキュリティ対策を行い、対策内容を公開しているサービスを選ぶと安心です。データの暗号化方式は適切か、ユーザー認証方式は安全性が高いものか、アクセス権の付与は柔軟かつ強固かといった視点で確認を行います。
また法人向けのクラウドストレージを選ぶことも大切です。個人向けに提供されているサービスは無料で利用できるなどコスト面でのメリットは多いですが、セキュリティ対策は法人向けサービスと比較すると弱い場合があります。個人情報や機密情報など、重要な内容を預けることにもなるため、慎重に検討しましょう。
自社でセキュリティポリシーを運用している場合には、ポリシーに違反しないサービスを選ぶことも重要です。
費用で選ぶ
クラウドストレージはサービスごとに料金体系が異なります。利用者数ごとに月額利用料が増えるもの、保管データ容量に比例するものなど様々なので、想定より費用が高くなる場合もあります。
コストを抑えたい場合は、自社の運用形態や必要機能と照らし合わせたうえでもっとも安くなるサービスを検討するとよいでしょう。
機能で選ぶ
メインとなるファイル保存機能だけでなく、情報共有のしやすさなど別の機能に注目してサービスを選定する方法もあります。
例えば自社サーバーの置換えでクラウドストレージを導入する際には、人事評価が入ったファイルや個人情報が含まれたファイルは特定の人だけがアクセスできるように設定すべきです。その場合はユーザーごとの権限設定機能が付いているかどうかが選定条件になります。
また、自社で活用しているMicrosoft 365などのオフィスアプリケーションだけでなく、TeamsやZoomといったコミュニケーションツールとの緊密な連携やスマホアプリに対応しているかどうか、業務利用のアプリケーションと連携できるAPIがどれだけあるか、開発やカスタマイズの容易性、ファイルのプレビューやサムネイル表示機能があるかなども検討材料になります。
まとめ
クラウド上でファイルを保管するクラウドストレージは、総務省の「令和元年通信白書」によるとクラウドサービスの中で最も使われているもので、今やビジネスに欠かせないサービスです。費用面で利用しやすい価格帯のものも多く、今後は大手企業だけでなく中小企業でもクラウドストレージの活用が盛んになるでしょう。
出展:令和元年版 情報通信白書 第2節「ICTサービスの利用動向」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/pdf/n3200000.pdf
クラウドストレージはコストや負担を軽減でき、ファイルの一元管理やリモートアクセスが可能、コラボレーションの強化など、多くのメリットがあります。自社での利用方法を検討した上で、上手に活用していくことで、業務効率化だけではなく多様な働き方ができるようになるといった大きな効果を生み出します。
今回はクラウドストレージに関する内容をご紹介しました。しっかりと製品選定してビジネスにお役立ていただければと思います。
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