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武闘派CIOがコロナで思い知った事実と、新たな改革への決意

 公開日:2020.09.01  更新日:2023.04.18

BOX定期セミナー

 7月7日に開催された大規模なオンラインイベント「Box Virtual Summit Japan Summer」で、フジテックCIOの友岡賢二氏が自宅からリモートでキーパーソンインタビューに登壇した。友岡氏は、製造現場も含めた製造業におけるコロナ渦対応の経験談をもとに、武闘派CIOとして知られる氏がニューノーマルをどう培っていくか、ITや情報システム関係者はどうあるべきかについて語った。その中には、セキュリティに対する考え方も含め、いくつもの点で「改革」や「変化・変更」が求められることが含まれていた。

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「非IT」という大きな課題が出てきた

 友岡氏は、パナソニックからファーストリテイリングを経てフジテックに入社。以来7年間同社のCIOを務める。フジテックはエレベーター、エスカレーター、動く歩道の開発と設営、およびメンテナンスを行う企業で、世界23カ国に事業を展開するグローバル企業である。

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フジテック株式会社
常務執行役員(CIO/CDO)
デジタルイノベーション本部長 友岡賢二氏

 新型コロナウイルスの感染が拡大して緊急事態宣言が出され、友岡氏は全社のテレワーク環境構築に尽力してきた。その取り組みが一段落した今、製造業のリモート環境の課題を次のように語る。

「特に現場を持つ製造業では、『ヒト・モノ・カネ』をいったん企業内部に閉じ込めて、そこから付加価値を作り出していくというプロセスが強みだった。それがコロナによって、会社や現場に行けないことで一度失われたため、事業を継続することが非常に苦しくなった」

 これをITの切り口、イントラネットとインターネットの「境界」という形で表現すると、VPN(Virtual Private Network)の中が会社の世界(つまりイントラネット内)、外がインターネットの世界ということになる。従来はVPNの中で働いていた人が、すべて境界の外側のインターネットの世界に放り出されてしまったというのが、今回のコロナでの状況だ。しかもこれが、全世界的に起きた。

「このリスクは、ほとんどの企業で想定していなかった」と友岡氏は言う。「現在リスクの再査定が進められていると思うが、この状況に備えていた企業はほとんどなかったのではないか、と。特に製造業の場合はものを仕入れて加工し、出荷するというプロセスを、すべて遠隔でやることは難しい」

 社員が全員VPNの外側に出てしまったという前例のない状況で起きたことは何か。まずVPNに接続するアカウント数が足りない。またリモートアクセスを受け入れるサーバーなどのリソースも足りず増強しなければいけない。さらに、在宅で使うための「持ち出し用のPC」も全社員の分用意出ておらず、あれもこれも足りないの、足りないづくしの状況になった。

 そこをなんとか乗り越えはしたが、「これからニューノーマルとして本格的に乗り越えていくためには、やはりこれまでのモデル、つまり「境界」防御の方法では、もうまかないきれないと思っている」と話す。

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「VPNとはその名の通り、会社の中にインターネットの世界とのバーチャルな境界を設けている訳だが、壁の外側にいる人が内側と同じように働けるようにすることを考えると、もはや壁の概念そのものを打ち崩さなければいけないと考えている。“ベルリンの壁”が崩れたように、企業を取り巻くインターネットとの間の壁を壊さなければいけないタイミングに来ている」

 友岡氏は、IT業界では“武闘派CIO”という別名を持ち、IT部門のあり方、SE(システムエンジニア)の仕事への取り組み姿勢などを積極的に発信している。またクラウド推進にも積極的に取り組む。

 だがその友岡氏でも、今回のコロナ禍によって、突きつけられた課題は多かったという。

「『守りのIT、攻めのIT』といわれるが、セミナーなどで紹介されるのは、主に攻めのキラキラした部分だ。だが、コロナによって守りのITよりもさらに外側にある、『非IT』の部分が大きな問題になった。企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)と言っている割には、それ以前のデジタル化(デジタライゼーション)されていないこと・ものがいかにたくさんあるかということに直面している」

 IT部門は、守りのITであっても、すでにデジタル化されものは把握できるが、そうでないアナログ部分の業務は実は関知できていなかった、と思い知らされた。例えば、社内でどれだけの紙が使われているか、どれだけの印鑑が押されているかなど、コロナ禍によって、見えていなかった部分が可視化される結果となった。

「だから攻めのIT、守りのITという分け方に加えて、もう1つ“地層”が増えて、『非デジタル化領域の情報のデジタル化』を、もう一段踏みこんでやらなければいけない」

 これは非常に重たい仕事だと友岡氏は言う。デジタル化できているものをどう活用するかは、ツールを使うことで比較的簡単に進むが、非デジタル化情報の掘り起こし、それをどう、どのソリューションにつなぐかという問題は、長年泥が堆積した“ドブをさらう”ような重い作業があるというのだ。

「特に製造業のIT部門は、キラキラしたITもやりながら、靴を脱ぎ、裸足になって足下の今まで手を付けてなかった澱んだ水の中に踏み込んでいくことになる。そこにドボンと入って、現場の人と『どうしようか』とこの局面ではやらなければいけない」

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ツールを絞り込んではいけない

 友岡氏は、これから企業がデジタル変革していく際に、IT部門がどうあるべきか、3つの指針を挙げる。

スクリーンショットの画面

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1つ目は、「顧客体験ファースト」という考え方だ。IT部門が社員に対し、あれもダメこれもダメと言っている間に、「一般消費者としての社員」の“顧客体験”はスマホとアプリ、クラウドによってずっと先に行ってしまい、企業が提供できる社員への“顧客体験”は著しく劣っているというのが、友岡氏の課題認識だ。

「例えば、スマホの中にSNSが1つだけという人は少ないし、ファッション感度が高い人は、写真のアプリだけでも3つも4つも入っている。ここからわかることは、1つで全てをまかなうのではなくて、こういうときにはこれを使うと用途毎に決めているのが現実だ。すごく細かいレイヤーでツールを使い分けているのが、生活者としてのITリテラシーのレベルだ。それに対して企業では、『これが標準で他はダメです』と言われる。他にもっといいものがあるのに、なぜダメなの?となってしまう。このギャップを埋めていかなければいけないと思っている」

 2つ目が「新しい生活様式」への対応だ。オンラインの中で、どうすれば商談をスムーズに進めてクローズまで持っていけるか。IT部門が支援して、社員の力をフルに発揮できるように環境を底上げしなければいけない。例えばZoomのようなWeb会議に参加する際の身だしなみとは何かを考える。必要な照明や装備についても、IT部門が面倒を見る必要がある。「それは情シスの仕事でない」と拒否せず、こうした細かいことにも取り組む必要があるという。

 3つ目が「SaaSのいいとこ取り」だ。これは1つ目の、状況によって細かくツールを使いこなすことにつながっている。

「当社ではG Suiteを使っていて、クラウドストレージも付いている。だが、Boxも利用し始めた。Suite製品に似たような機能があるのになぜ?という議論が必ず出てくるが、細かいニーズに対応するため、充足するにはツールを使い分けるというのが、今のお作法だと思っている」

 フジテックでは、Googleではちょっとしんどい中国との情報の共有にはBoxを使っているという。それ以外のケースでも、社内では良くても社外とのやりとりで相手がどんなデバイスを持っているかわからないようなケースを考えるとBoxを使えば安全に情報がやりとりできると、G Suiteがあるからそれで足りる、それで良いというのではなく、細かいニーズを満たすためにもBoxを追加導入している。

「1つのツールに全てを求めず、こういうときはこれという形で、自社にとってのいいとこ取りをする。IT部門は、自社には何がいいのかを目利きすることが必要。いいものは、『これすごくいいよ』と推奨していく。こういったことが、これからのIT部門の仕事になっていくと思っている。

導入は“虎”のいないところで始める

 次に友岡氏は、デジタル変革を進める際のIT部門の心得を話した。

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「まずは『虎の尾を踏むな』。これは何かというと、既存の仕組み、レガシーがあるところは、改革しようと下手に触ってはいけないということだ」

 例えば業務でFAXのやりとりがされていたとする。それを単純に別のものに置き換えようとするのは、よしたほうがいいという。始めてしまうと、最初は見えていなかった問題(=虎)が現れるというのだ。

「最初は、何もないところに入っていくのが一番いい。先ほどの中国との情報をやりとりは、もともとツールが何もなかった。そこにBoxをぽんと入れても、誰も文句を言わないし、みんな喜ぶ。ニッチかもしれないけど、何もないところに小さいSaaSを小さい粒度で差し込む。はじめは小さいが、皆が使えば広がっていく、普及していく。

 武闘派というと、いつも刀を振りかざして戦っているイメージがあるが、私は最強の戦法とは『戦わずして勝つ』だと思っている。戦ってしまえば血が流れる。それは避けるべきだ。そして最後は『弱肉強食』。つまり皆が使うものが勝ち、使われないものは自然淘汰される」

 次の心得は、「やってみなはれ」だ。これも前述したツールの使い分けからつながっている。現場があるツールを使いたいと言ってきたときに、頭ごなしに否定せず、まずは使ってもらう。ただ、基本的にセキュリティが弱いとか、入れてはいけないものは拒否しなければいけない。そのため常に勉強し、問い合わせがあった製品がどういうものかは、目利きができなければいけないという。

 ツール選定に際して、大企業でよくあるのは「〇×表」だが、「あれは止めた方がいい。時間の無駄だ」と友岡氏は釘を刺す。

「Boxを使いたい部署があれば、すぐに買って入れてしまった方がいい。〇×表で比較する項目は、それまでの実績をベースにしたものしか書けない。新しい製品は、その表では評価できないところで進化している。まずはそれを体感するべきだ」

 Boxについても、あの良さは使ってみないと分からない、使ってみて非常に便利で性能が高いということがあったという。「例えば共有相手のデバイスのセキュリティレベルが低いときはダウンロードできないとか、スマホのOSによってセキュリティ設定が切り替えられるなど細かいことが、Boxでできるとは思っていなかった。使ってみて初めて知ったことだ」

 従来は、社外と情報のやりとりするとき、クラウドサービスのIDを全部振り出して与えていたので、結構コストがかかっていたという。それがBoxでは外部の人でアカウントがなくても、メールアドレスで認証して安全にアクセスできるため、追加のライセンスもいらなくなった。

 また、SaaSの場合はいきなり本番環境で使う方がコスト的にも見合うという。

「下手にケチって、PoC用の環境をタダで作ってもらい試すと、あとで後悔する。最初に買ってしまい、一部で実験をかねて本番として使う。うまくいけばそのまま使い続ければいい。PoC用のベッドを作ると、そこから本番用に移行しなければいけないので二重に手間がかかる。SaaSはまず買うというのがお勧めだ」

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IT部門にかかる大きな期待と責任

 そして最後の心得「やらねばやらぬ」は、友岡氏の思いが込められた言葉だ。

「IT業界人のツイートを見ていると、『だからあのとき言ったのに、やらなかったからこの体たらく』というような、自社を揶揄するようなつぶやきを見る。気持ちはわかる。でもそれはこらえて、今日やるべきことの結果を出してほしい。それが僕たち情シスのSEのプライドだと思う」

 友岡氏は続ける。

「医療従事者の方の写真を使っているが、これは今コロナの中で、目の前に熱があって具合の悪そうな人がいれば、みんな逃げるだろう。でも逃げない人がいる。それが医療従事者の方々だ。彼らはプロとして、困難に立ち向かう。彼らにも生活や家族がある。自らの生命の危険すらある中で、プロとしての仕事を続けている。

 同じように、僕らもITのプロフェッショナルとして、今何ができるのか。それを本当に頭から汗が出るぐらい考えて考え抜いて、アウトプットを出さなければいけない。ITがこの社会をどう変えていけるのか。デジタル化されていないものが多くある中で、何から変えられるのか、印鑑、紙の請求書といった不都合な真実に対して、誰が変えられるのか、といったときに、自分達の存在理由としてもIT部門、エンジニアが立ち上がらなければいけない。

 予算が無いなどといっている場合ではなく、クラウドなら1人月数千円で始められるから、どんどんトライ&エラーができる。今ならエラーも許される。ホームランはいらない。打席に立つ回数を増やし、コツコツとヒットを打っていけばいいと思っている」製造業だからできないということは無い。

 友岡氏は最後に、IT部門が自社の課題解決、改革について当事者意識を持って解決していってほしいと語った。

「企業のプロセスに課題があれば、それを『自分事』として捉えることが第一歩。解決するのは自分の使命だと捉えてほしい。コロナで製造業の現場は困っている。情シス、ITの皆さんは、その現場の声を聞き、解決に向け真摯に取り組んでほしい」と締めくくった。

編集後記

キーパーソンインタビューの30分はあっという間に終わったが、他の機会にもう少しお話しを伺った。その中で、製造業特有の設計部門でどうこの危機を乗り越えたかのお話しがあったので、追記したい。

具体的には、図面を扱う業務のテレワーク化についてである。CADを使う作業には、ワークステーション等のハイスペックなマシンが必要となるが、同社では以前よりノートPCでリモートから社内のデスクトップPCにアクセスし、オンプレ環境でカスタマイズしてきたCADソフト図面を閲覧できる仕組みを用意していたという。クラウドのCADサービスでは実装されていない機能もあるための措置だったが、このコロナ渦では、自宅から図面を閲覧するだけではなく、作成もできないと業務が進まない。そこで友岡氏は、元々AWSを活用していたこともあり、自宅のPCからAmazon WorkSpaces(仮想デスクトップサービス)を介して社内システムにアクセスする方法でテレワークが難しいCADといった重いソフトを使う設計業務といったこともテレワーク化させた。

クラウドには、BoxのようなSaaSもAWSのようなIaaSもある。日本の基幹産業でもある製造業のニューノーマル化に各クラウドベンダーができることはたくさんあることをあらためて思った。

Boxだからできる「働き方改革」実現マニュアル

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